誰かが誰かの審判
エアコンの効いた駅近くの喫茶店。注文されたアイスコーヒーは、
最近また書いてたりするんだろう、と友人が二つ目のガムシロップ
「書いてるって何を」
「何をってことはないだろう。いつぞやみたいな小説とかそういう
赤く細いストローでカチリカチリとかき混ぜながら、彼は笑う。
「最近はそうでもないよ」
そう答えてから僕はグラスに口をつける。苦味のせいか暑さでぼん
「上手くいかないんだ、何だか」
僕が呟くと、彼は要領が掴めていないような顔をした。昼寝してい
「何というか、批評が怖いんだ」
そう言ってから僕はまたコーヒーを口に含む。氷が溶けてほんの少
しばらく考えるようにしてから、ああ、と彼は合点がいったように
「昔はプレイヤーになりたくて仕方なかったのに、いまとなっては
ふっと、力を抜くように椅子の背もたれにもたれてから、彼は笑っ
「そんなことは気にしなくてもいい。大体、対したことはないから
いや、知らないと答えると、甘く混ぜ合わされたコーヒーをぐっと
「悪くない、だ。本質が見えていない連中は大体そういう評価をす
Not bad. と口にしてから、彼はまた笑う。
「あまり深刻にならなくていいんだ。文章の中にさりげなく意味深
「そして彼らは本質を評価できていない」
そういうこと、と彼は頷く。そしてちらりと隣の女性を横目にする
「この人にいま読んでいる本の感想を聞いてみようぜ」
「それで、どうするんだよ」
と聞いてからはっとする。テーブルの上を片付けてから、おもむろ
それから10分ぐらい彼女の批評が続き、そろそろ時間だからと言
「なあ、彼女どうだった」
彼が尋ねるので、僕は引き寄せられるように見惚れていた彼女のこ
「悪くない」